第108回前田圭介 × 荻野寿也
タイトル |
前田圭介 × 荻野寿也 「庭と建築」 |
日時 |
2014年11月6日(木)18:00~20:30(17:30開場) |
会場 |
神戸まちづくり会館 2階ホール |
第108回アーキテクツサロン「技×技シリーズ」の第1弾として,UIDの前田圭介氏と荻野寿也景観設計の荻野寿也氏をお招きして,「庭と建築」というテーマで講演いただきました.第一部ではそれぞれの今考えていることや庭や建築などについて語っていただき,第二部では兵庫地域会所属のy+M design office一級建築士事務所の三宅正浩氏をコーディネイターとして加わっていただきトークセッションを行いました.
前田氏は福山の町並みや看板のありかたなどを語りながら,建築には「気づき」を人に与える能力があるように語られていいたように思いました.それは「建築」というものではなくそこに,「環境」をつくることよってなしえることができ,その際に重要になってくるのが「緑」の存在であり,「建築」と「緑」は環境をつくるにあたって境界のない,ボーダーレスな関係であると語られた.そこにはご自身もアウトドアが好きで,自然の中でいることで普段の生活では気が付けないもの,例えば飯盒のお焦げがとてもおいしく感じるといったことに気づけるという体験からそのような考えにいたられたのではないだろうか.
荻野氏は「日本の原風景」を再現したいというのが当初からの考えてであり,できればヘリコプターで建築のところまでそのような環境を運んできたいと語られたほどでした.建築における庭のあり方,それがあることによってクライアントに与える影響などの試行錯誤について,そして,園芸種などを使った現在の庭づくりの手法などを語っていただきました.
トークセッションでは三宅氏によってそれぞれの手法についてお互いに思っておられることが次々と引き出されていきました.
前田氏は室内で緑を使うことが可能なことを荻野氏と相談することで確信を得たことや樹種の選定にストーリーのある荻野氏の手法などを語られました.荻野氏は前田氏の施主との関係性やそこにある粘り強さや辛抱強さについて語られました.室内に緑があり開け放つと当然,鳥や虫が入ってくる.そのことをクライアントと共有できるまで関係を作り上げていくその前田氏の姿勢はなかなかまねできるものではないと.
お二人はこれまでの共同によって,管理の要らない庭というものはなく,コントロールされている自然を再現して,出来上がったときが建築の完成ではなく,そこにはクライアントの手が入ることによって熟成されていき,環境が出来上がってくるという共通言語のようなものが出来上がっているように思いました.
そんな施主と建築と緑の関係性という「環境」を2人で創られているように感じた充実した講演会となりました.
(山﨑康弘)